カレン民族の伝統と文化を守るために、独立を求めた続けたカレン族の誇りが、今も、伝統的な機織りの技術と民族伝統の布の中に生きています。

 

カレン族の歴史と伝統文化(手織り)


カレン族の人たちは、「白カレン」に属する「スゴー(Sgaw)族」や「ポー(Pwo)族」、「赤カレン」に属する「カレンニー(Karenni・カヤー:Kayah)族」や首長族と表されることのある「カヤン(Kayan・パダウン:Padaung)族」など、いくつかの分派にわかれ、その分派ごとに民族文化や衣装などが異なっています。

1948年、ビルマがイギリスから独立した際、カレン族は、ビルマ連邦からの分離独立を強く主張し、ビルマ政府との間で、独立闘争を本格化させ、翌1949年からの長い間、内戦状態が続いてきました。

1962年のネ・ウィン氏によるクーデターで、「議会制民主主義」から「社会主義」へと移行したことに不満を持った各民族集団が蜂起しましたが、軍の圧政により、徐々に周辺諸国へ難民として流出していきました。
 

 
その中でも、多くのカレン族の人たちが避難しており、2011年の総選挙で、「軍政」から「共和制」へ移行し、難民たちの故郷への帰還が進められるのではないかという期待感がでてきていますが、いまだ多くの人がタイ西部の国境周辺の難民キャンプ内での生活を強いられています。

今でも、タイ北部・西部から、ミャンマー(1991年に軍事政権によってビルマから改名)の東部・南部にかけて居住しており、モン(Hmong)族の人たちが主に土間の家であるのに対し、カレンの人たちは茅葺屋根の高床式住居を建て、住んでいます。

女性の民族衣装は、自分たちで手織りした草木染めの布などに植物の種をデザインして縫い付けたりすることがあります(右写真:女性のスカートの一部)。また、未婚の女性は白いワンピースの衣装を着る習慣があります。
取り付けられている種は、小さな頃によく、つなげて遊んだ「数珠玉(じゅずだま)」に似たイネ科の植物の種を使います。
 

「織り人」では、カレン族の人たちの手織りの布をつかった製品を、いろいろとご紹介していますが、その素材や染織方法などによって、その生地の色、柄、風合いはそれぞれ異なります。

また、手織りといっても、織機はさまざまで、一番シンプルな腰機(こしばた)・いざり機(ばた)から、 効率よく織物を織るために、構造や機能が改良されてきた高機(たかはた)まで、その国、地域、伝統により異なります。

カレン族の織りは腰機(こしばた)で、経糸を張るために腰帯を備えた織機です。これは、織り機の原点ともいえる機で、最もシンプルで原始的な織機といわれています。
現在でもアジア、主に、インドネシアの島々や、タイやミャンマー(ビルマ)、ベトナムなどの 山岳地に居住する民族の人たちが、日常的に使用しています。
 

腰機といっても、通常は腰機専用の織台があるのですが、カレン族の織りでは、床にそのまま座り、どちらかといえば体と柱が織台の代わりになったもので、腰機の中でも、より原始的なものと考えられます。

今でも体に負担のかかる腰機での機織りが残っているのは、常に経糸を緊張させておく高機とは異なり、織り手が経糸の張り具合を調整できるため、腰機でしか織れない織り方や文様などがあり、カレン族独自の織り布をつくり上げるためには、欠くことのできない織機であることも考えられます。

カレン族の女性が機織りをしているところを、後ろから撮影させていただいたのですが、腰には腰帯が巻かれ、家の柱から、たるみなく経糸を引っ張りながら織っている様子がよくわかります。

足は、踏んばれるように、小さな椅子などを置き、足を突っ張り、腰に巻いた経糸を ぴんと張りながら、織っていくため、腰に負担のかかる重労働な作業です。

それでも、今でも、家の軒先で自分たち家族の生活に必要な分の布を、お正月や結婚式などのハレの日の衣装のために、何ヶ月もかけて織り、準備していくのです。

 

世界的に主流な高機(たかはた)の織り




カレン族の間でも、平織する際には、早くきれいに織ることができる高機をつかうこともあり、その他の多くの国や地域、民族の中では、椅子に座って織る「高機」が主流となっています。

農繁期などの間は、織機は分解して保管していたりする場合もあります。
これは(写真左)、ベトナムの黒モン族の村の家の軒先に立てかけられた高機の織台の一部です。
 

下の4枚の機織りの写真は、ラオス農村の軒下での機織り風景(2枚)とインドとガーナで見かけた機織り風景(それぞれ1枚ずつ)です。

アジアやアフリカでも世界的に、織台を備えた、椅子に座って織る高機が普及しています。

 
 

 


 

日本の東北地方の織り


日本各地にも、さまざまな織りが存在しますが、東北地方の織機も、カレン族と同じ腰機が主流であったといいます。

福島の民家園に展示されていた民家の中には、織機や糸ぐるまなど、手しごとにかかわるものが多く残されていました。
福島のみならず、東北地域全域で、主に腰機での機織りがおこなわれていたといわれています。

タイの山奥のカレン族の人たちと日本の東北地方の人たちが、同じ腰機の文化を共有していたというのは、山々に囲まれた近隣の村々から隔絶されていた環境と、雪深く長い冬を過ごさなければならなかった環境が、そうした同じ文化の発展をもたらしたのでしょうか…。

日本の東北文化を知れば知るほど、タイの山岳民族の人たちとの共通する風習や手しごとがみられ、本当に興味深いことです。
 
 



 

タイ−ミャンマー(ビルマ)国境のカレン族の移民労働と民族伝統技術


ミャンマー(ビルマ)国境沿いに位置するターク県など近隣6県には、タイ国籍を持つカレン族のタイ・カレンと呼ばれる人たちが多く暮らしています。
特に、ターク県では人口の8割を占め、タイ国内の8〜9の山岳民族の中で最大規模の35万人以上、カレン族全体の人口としては、ミャンマー(ビルマ)東部のカレン州やカヤ州を中心に300万人(2012年現在)にのぼります。
こうしたミャンマー(ビルマ)など隣国からの移民労働者の人たちの雇用問題も、大きな問題となっています。
 

「織り人」の製品をつくってくれているターター・ショップで使っている布は、カレンの村(主にポー・カレンの村)でミャンマー(ビルマ)からの出稼ぎのモン族(Mon:タイ北部に多く住むモンHmong族とは異なる)の人を雇用して織っていることもあるようです。
その場合、織り始める時の柄を入れる作業は、カレン族の専門職(クルーと呼ばれる)の人がするそうですが、こうしたことを通して、異なる民族間での伝統技術の融合も進んでいくことも考えられます。

それぞれの民族独自の伝統を守り、継承していくことも大切なことですが、時の流れと共に、伝統技術や文化も変化していくことは必然的なことなのかもしれません。そしてまた、そのことにより、新たな雇用を生み出す可能性もあるという現実もあります。

これまでの長い歴史の時間の中で、そうして変化しながら残ってきたもの、それが今、私たちが見ている伝統ともいえるのかもしれません。
そして、それが新たな評価を受け、次の世代へとさらに変化を続けながら、引き継がれていくのかもしれません。

「織り人」では、伝統的な文化や技術を守ることだけでなく、その変化も受け入れ、新たな製品へとつくり上げ、いつもまでも続いていく"もの"をつくりたいと思っています。
 


*これは(上写真)、移民の子どもたちの保育園の部屋にかけられていた通園用のカレンバッグです。これらのバッグも、お母さんやおばあちゃんたちが手織りした布をつかってつくっているものです。

 
 
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