「織り人(Orijin)」の「ものづくり」と「人」
「織り人」では、それぞれの生産者の人たちと一緒に、伝統的な技法やモチーフ(模様)をいかした、新しい商品づくりをしています。
民族独自のモチーフ(模様)や色の組み合わせなどをいかしつつ、その刺繍の色合いや模様に合った商品のデザインを考え、つかう人にとって使い勝手のよい、つくる人にとっても、楽しく、やりがいとなるような、オリジナル性ある製品づくりを目指しています。
そのためには、「織り人」と、刺繍やアップリケ製作の村の人たちや製品として仕上げの縫製をするスタッフとの間で、中心になり、オーダーする側の希望や、つくり手のこれまでの経験を踏まえたアイデアや意見を聞き、取りまとめていく人の存在が不可欠です。
そうした人材がいることが、新たな可能性を作り出してくれる一番重要なことだと考えています。
シーカー・アジア財団(SAF)では、元縫製担当スタッフのメーさんが、現在は全体を取りまとめ、新しいオーダーなどにも対応しています。
細かなサイズの違いや縫製の仕方、仕上がりをチェックしながら、時には、使っていただいたお客さまのご要望に合わせて、よりよい製品になるよう変更を加えながら進めていきます。
上の写真は、新商品の「
ポケットティッシュケース」の製作の様子ですが、縫製を担当するスタッフも、きれいに仕上がる方法を考えながら、少しでも使い勝手をよくするためにはどうしたらよいか、試行錯誤を続けていきます。
元々あるモン族の伝統的な刺繍パターンの布をいかしつつ、どのように配置させ、どのように縫っていけば、よりきれいに仕上げることができるのか、刺繍が一番映えるようにするにはどうしたらよいか、考えながら縫っていきます。
タイ北部にある(山岳)少数民族出身者のための学生寮のスタッフは、刺繍製作をしてくれているモン(Hmong)族の村とリバースアップリケの製作をしてくれているモン族の村との間で、村の人たちへの注文依頼から商品の取りまとめなど、一所懸命に取り組んでいます。
新しい刺繍の注文をつくり手に伝え、希望の色合いになるように、納期に間に合うように、調整していきます。
刺繍糸の色の組み合わせや、アップリケの布の色の組み合わせなども、オーダー元の依頼を聞き、村の人たちへ伝えます。
あるモン族の村では、これまで、刺繍をする布は、はりのある黒い布を使っていました。
その布は、安く手に入るということだけでなく、刺繍を刺しやすいためでした。
もともとモン族の女性たちは、刺繍のモチーフ(模様)を下書きすることなく、布の織り目を数えながら刺していきます。これまで長い間使ってきたその黒い布は、布の目がそろっているため、刺繍の布として適していたのです。
長年、同じ布を使い、同じモチーフ(模様)の刺繍をしてきているため、なかなか新しいものを取り入れるのはむずかしいかもしれないと考えていましたが、木綿の草木染め手織り布のサンプル生地を持っていくと、その布でも挑戦していただけることになりました。
また、これまでは、布全体に刺繍をしていましたが、ワンポイントだけの刺繍などもお願いしてみました。すると、こんな模様はどうか?こういう小柄の模様ならできる、などなど、いろいろなアイデアがでてきました。
徐々に、依頼していた新しい刺繍ができあがってきているようです。これまで刺したことのある模様や、その一部を組み合わせたり・・・、新しいアイデアがどんどんわいてくるようです。
今までと違う刺繍ができると、さらに新しい商品をつくることができます。
これまでのやり方を変えていくことは、少しエネルギーがいることかもしれません。
それでも、常に新しいことへ挑戦することで、刺繍づくりを継続していくためのモチベーションを高め、よりよい商品づくりができるようになると考えています。
これからも、生産者のみなさんと一緒に、新しいものへ挑戦していけたらと思っています。
上の写真は、モン族女性の現在の民族衣装に使われている刺繍です。
モン族の人に限らず、タイの人たちは一般的に、日本人よりもあざやかな色合いを好みます。
そのため、最近では蛍光色の刺繍糸や、市場で販売されている中国などからのカラフルな刺繍ワッペンを購入し、自分たちの衣装に縫い付けることも多くなってきています。
上の写真は、縫製をしているミエン族の女性のところへ、ミエン族のおばさまが、自分で刺した刺繍の布を売りに来た時のものです。
ミェン族の人たちも、モン族の人たちと同じように、あざやかな色合いの刺繍を好みますが、斬新な幾何学模様のものも多く、見れば見るほどすてきな刺繍です。
『織り人』は、近年のこうした、独自の民族が好む色合いの傾向と、伝統的な民族モチーフ(模様)をいかしつつも、日本人の好みにも合うような色合いの提案や、それぞれの刺繍や色に合ったデザインを考えていきたいと思っています。